成長拡大を実現できる企業の共通点
2016年調査における総務省の経済センサスによると、日本には法人企業188万社、個人経営198万事業主があり、合わせて386万企業が存在しています。
その内の0.3%が大企業で、残り99.7%が中小企業です。
その後に起きたコロナ禍で、数字の変化はあるでしょうが、いずれにしろ日本では中小企業が圧倒的多数であることに変わりはありません。
私がコンサルティングに携わる中で、また自身の人生経験の中で出会った企業(法人・個人事業主)の中で、成長拡大する企業には、いくつかの共通点があります。
まず第一に、揺らぐことのない企業理念、経営理念があり、かつそれが社内に浸透していること。
第二に、制度設計にしっかり取り組み、それを正しく活かしていること。
第一点目は、基本中の基本のことなので割愛しますが、二点目の『制度設計』がとても重要です。
制度設計と言っても、それは実際には多岐に渡ります。人事評価制度、賃金給与制度、勤怠管理制度、人材育成制度etc……。
そもそも「制度設計」とは何なのかというと「新しい制度を作る、または現行の制度を改善する場合に、その目的、対象、具体的な内容、必要な組織・人員、運営の仕方などをまとめた計画」です。
つまり広い意味で考えるなら、宣伝広告の打ち方や材料の仕入れ方、はたまたオフィスの使い方、掃除の仕方にまで制度設計はあるわけです。
では、もっと端的に『制度設計』を言い換えるとしたら?
それは『事業を行うのに必要なシステムやルール作り』と言えるでしょう。
残念ながら、まだ日本の大多数の中小企業では、社長、役員や幹部という人たちの主観によって、いろいろなことが決められます。
人事査定、賃金や給与の決め方、事業の進め方、はたまたお茶汲み当番。
なぜ、そうなるのか?
『制度設計』ができていないからです。
制度設計をするということは、主観による不公正・不公平を極力なくし、経営者・労働者の双方ができるだけ納得しやすい客観性のあるルールを決め、事業を力強く進める下地を作ることだと言えます。
例えば、賃金給与が経営者の意向だけで何となくで決まる会社と、何歳で何年勤続してステップアップしてきたかがカウントされて何等級だからいくらという基準があって決まる会社。
あなたなら、どちらで働きますか?
小さな企業だから「何となくの流れでやれるだろ?」という幹部の指示にもならない指示で事業を進める会社と、目的・対象・内容・メンバー選抜・それぞれの目標や動き方の指針が誰にでも分かるように示されて事業を進めていく会社。
あなたなら、どちらがやりがいを持って働けますか?
働く者の意欲やポテンシャルを上げ、企業の力に転換し、業績アップに繋げるために必要な環境整備=制度設計なのです。
実際のところ、制度設計という作業は、なかなか難しいもので、現状の制度を変える時にバランスを考えたり、人的なハレーションを起こさないように配慮もしながら、モデルケースをいくつも検討して、そのメリット・デメリットを理解し、着地点を見定めなくてはいけません。
冒頭の数字の並んだ画像は、私がある企業のために作った賃金テーブル(給与額の決定のための基準表)ですが、慣れた人間でも骨の折れる作業です。
しかし、そうした細やかな制度設計に取り組むことで、従業員は安心感と信頼感を持って企業に貢献してくれるようになります。
経営者の側も、きちんとした制度設計があれば、何事も効率的にスムーズに進めやすいはずです。
中小企業から脱却して大企業を目指す成長フェーズに入った会社は、必ずこの制度設計に取り組みます。
それは、制度設計がもたらす恩恵が大きいと気付くからです。
制度設計は、事業規模、従業員数・事業所数が増えるほど労力が要る作業になっていきます。
ですから、いまはたとえ小さな会社でも、いいえ、小さな内にこそ、将来を見据えた制度設計に手を付けてください。
小さな内に早くから制度設計に取り組んだ企業は、それが必ず成長拡大のキーポイントになるはずです!