なぜ、そうするべきか!?
どの企業でも大きな課題になるのが『人材育成』です。
人を育てる、人に教える、というのは、一筋縄にはいきませんよね。
私自身も、いままで後輩や部下を何人も持ってきました。
先輩プレイヤーとして業務を教えていくこと、マネージャー、管理職として人を育てること、いろいろと経験させてもらって、それがいまはクライアントさんたちに伝えられる実体験の財産になっています。もちろん、失敗も成功例も含めてです。
人材育成の手法、コツは、もちろんひとつではありません。
いくつもの要素を組み合わせて、かつ相手に合わせたやり方も考えなくてはいけないものです。
ただ、どんな企業、どんな関係性でも、後輩を教える、部下を育てるという時に、一番重要なことは決まっています。
言わば、人材育成の肝心要の部分。
それは『何をして欲しいか』ではなく『何を大事にして欲しいか』を徹底的に浸透させることです。
言い換えると相手の『行動をコントロールする』のではなく、相手に『行動の基準をきちんと持ってもらう』ということ。
日常の業務で何かを覚えさせる、ミスをしたら問題点を指摘して改善させる、これは必要なことではありますが、そればかりに終始してしまうことはいけません。
大事なことは「なぜ、こうするべきなのか」を自発的に考えて、それを行動に落とし込めるような人材に育ってもらうことです。
ひとつの行動を修正したとしても、その人の仕事に対する根本的な気持ちや考え方ができていなければ、必ずまた違うことでつまづき、忘れ、ミスを犯します。
逆に、自分がこの会社で、いまの立ち位置で、何を大事にして仕事や役割に向き合わないといけないのかが考えられる、それに気づくことができる人は、最初はできなくても、少々のミスをしても自分で工夫し、自発的に改善や修正をするようになります。
そこで大事になるのが『企業理念』です。
企業理念については以前も書いていますが、それを育てるべき相手の心に浸透させることが、人材育成の一番大事なポイントです。
例えば、あなたの会社の理念が『お客様を笑顔にする!』なら、それを常に言葉に出して、会話に織り交ぜて、繰り返し育てるべき相手に伝えていってください。
「ウチで仕事をする上で、一番大事なこと、あなたにいつも考えていて欲しいことは『お客様を笑顔にする!』という理念です」
そう何度も伝えて、それが考え方や行動の基準なのだと理解してもらえれば、何をするにしても「こうしたらお客様は笑顔になるかな?」「こんな言葉遣いではお客様を笑顔にすることはできないんじゃないかな?」「じゃあ、こうしたらどうかな?」と、相手は自分で自分の行動を見つめ直し、それを改善するようになります。
人間は自分のとった行動の良い点、悪い点を指摘されると、それにばかり捉われます。指摘する側、育てる側も、そうです。
それが繰り返される内に、一番大事なこと、つまり「なぜ、そうするべきか!?」を忘れて、行動、作業、それを無難にこなすこと、叱られないようにすること、を一番大事なことだと勘違いするのです。
それでは、根本的な問題解決や成長にはなりません。
作業をこなすこと、ミスをしないこと、という行動そのものが大事なのではなく、これをするのは何のためなのか、を大事にしてください。
育てる側も、教えられる側も、それを常に心に留めて仕事に向き合うようになれば、人材育成は格段に効果を上げられます。